恋愛小説 ハッピ-エンドばかりじゃないけれど

大人になったばかりの男女大学生たちの、真剣だけれどドジな行ったり来たりを繰り返す、恋と友情の物語

第11話 悪夢の再来?

翌日大学へ行くと吉報⁉が待っていた。

企画していた合コンの日取りが決まったのだという。日程もそうだが、もっと重要なのはどこの誰とやるかだ。

それはF女学院の1年生4人ということだった。それなら上出来、と言っていい。

F女学院大学は、数あるお嬢さん学校の中でも美人が多いと噂される女子大である。

 

こちらの4人は、悠介と滝本純一、合コンのセッテイングをした吉福正樹、それに商学部の黒川尚大というメンバ―になった。全員付属高校から一緒の連中だ。これは面白くなりそうだぞ、という期待が膨らむ。

話し上手、というよりホラをさも本当のように話す話術が絶品の滝本、選抜された4人の中で一番の長身(185センチ!)の割には身のこなしが軽く至る所にコネがある吉福、最後の黒川は庭にカネの成る木が植わっていると噂される資産家の御曹司(らしい)でやたら気前がいい男である。

そして自分は何か取り柄が有るかと考えて…あったぞ。

野放しにするとやたらうるさく吠えたり、さえずり声がうるさい動物たちを統括する指揮者あるいは調教師という役目がぴったしの、真面目でまとめ役にうってつけの自分という事になる。そう、彼らはほっとくと一人で帰れない、付き添いが必要な連中なのだから。

 

さて、もう合コンの当日がやってきた。

悠介たち8人は都心の繁華街にある居酒屋に集まることになっていた。集合時間は6時。

悠介は滝本と、もよりのJR駅で待ち合わせてやってくると、その居酒屋には彼らも含めて7人が集まっていた。女性一人が30分ほど遅れるとの連絡があったとのことで、とりあえず乾杯と自己紹介を始めましょうか、とまとめ役の僕が提案した。

ざっと見渡してみると、みんな粒ぞろいのかわいこちゃんだねぇ。全員スレンダ—系でショ-トヘア―、ポニ-テ-ル、ロングありと賑やかなこと。悠介たちもそうだが、彼女たちもよく話しシャイな人はいないみたいだ。これは予想以上に盛り上がりそうな予感がする。

頃合いを見計らって、悠介はこの合コンの間はファーストネームで呼び合う事を提案した。その方が親しみが湧くだろうと思ったのだ。

 

そうしていると、3人娘が叫んだ。

「あ、みさとが来た!」

「みさと、こっちよ!」

 

皆の視線が集まる方を向くと、淡い色合いのワンピ-スにネイビ-ブル-のブルゾンを合わせたシックな服装の女性が僕らのテーブルに近づいてきた。

やっと8人そろったところでまた乾杯することになった。

新参者は僕の斜め向かいに着席したのだが…。

どんな子かなぁ、と椅子に腰かけた彼女の顔を見て仰天してしまった。いや、卒倒しそうになった!

-嘘でしょ、あの『婦人警官』が何でそこに座っているの?

 

悠介は、この時確信した。これは例の悪夢の続きだ、と。

こんなタイミングであの女に会うはずが無いじゃないか!

悠介は、夢を覚ますときのある意味「癖」のようなものとして、自分の右手で自分の右頬を強めに引っ叩いてみた。夢の中で自分を引っ叩いて夢から覚めるとは、よく考えてみると不思議なことで現実には起きそうもないが…

やはり現実は非情だった。悠介は決して夢から覚めることは無かったのだ。

 

この時、悠介は無意識のうちに何か声を上げていたらしい。

それに触発されたのか、彼女も僕に気付き、驚きの余り、目が飛び出しそうなほどに見開かれていた。

「あの痴漢男!」

と大きな声を出す始末。

悠介は思わず《あちゃ-っ》と呟き、両目を瞑ってしまった。これから起こるだろう騒ぎを直視できなかったのだろうが、幸い居酒屋というのは騒々しいのが当たり前なので、我々の手-ブル以外には聞こえてないようだったので大事にはならなかった。

しかし、2人の異様な雰囲気に気付いた6人は、興味津々に僕ら2人を交互に見ている。さあ、これからなんかスペクタクルが起きるぞ! という期待感が表情に溢れているように悠介には感じられた。

 

-何と言う事だ。悪夢の再来だ!

 

その女性も難しい顔をしている。当然だろう、お互い気まずい思いをしたのだから。

この時点で僕の進行係としての役目を果たすのが無理と判断したのか、滝本が気を利かせて訊いてきた。

「この人、悠介の知り合い?」

僕は返答に困ってしまった。知っていることは知っているが、知り合いとは言えないだろう。

返事に窮していると、あの娘がこぼれんばかりの、しかし如何にも作ったような笑顔で、

「ええ、つい最近お目にかかったんです。」

そして僕に向き直り

「あの時はいろいろありましたが、あの後大丈夫だったですか?」

そっちがそう来るなら僕も

「ええ、大丈夫でしたよ。ただ、ちょっと綺麗な模様が残ってたので記念に写真を撮っておきました。よろしかったらソレ、お見せしましょうか?」

「そうですか、後で見せていただきますわ。」

実際、帰りのメトロ車内でほっぺたの「手形模様」を隠すのに苦労したものだった。

 

悠介と美里2人のよく分からない会話を聞いていた6人は、どうという事が無いと思ったのか、悠介たちの会話に耳をそばだてるものはいないようだった。

 

悠介は悪夢のことがあったので、素直に謝ることにした。

「あの時は咄嗟のことだったので、両腕が自然に動いてしまって、あんなことになるとは思わなかったので…。ごめんなさい。」

ちょっと締まらない謝罪言葉だったが、彼女が何も言わないので続けて、

「やっぱり、婦人警官じゃあ無かったんですね。」

その言葉に彼女はどっと笑いだして無表情な不気味な仮面が溶けたと思ったら、中から美女が出てきた錯覚に襲われたほど、その女、いやその女性は魅力的で綺麗な人だった。

 

-可愛い。めっちゃ可愛いなぁ。

 

そんなことを呟いて彼女を見つめていると、

「当たり前でしょ。私は大学1年生なんですから。」

と澄ました顔で返事を返してきた。まるで悠介に笑顔を見せたことを後悔しているかのように。

さて、次はこの人の不機嫌の仮面をどうして剥がしたもんだろうかと、笑顔が魅力的な女性の顔を見ながら、悠介は真剣に考えていた。

 

《つづく》

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