親友たち(3)美里の運命の人 第35話
美里にとってこの週は話題に事欠かない1週間だった。
まずは悠介とのデートの後の襲撃事件、そしてあのイケメンの男の人のこと…。
-今回も真理に話すことがいっぱいだわ♪
ルンルン気分とはこのことだ。
真理のマンションは、居心地がよく落ち着いて話ができるので気に入っているのだが、そう度々では申し訳ない。そのことを言うと、
「そんなことないよ。全然迷惑じゃないから。でもそう思うんだったら、コンビニでなにかおつまみでも買ってきてよ。そう、それがいいわ!」
という事で、また真理のマンションになってしまったのだ。
-さてと、何から話そうかしら? 襲われたことは興味深い(!)事件ではあるけれども、あまり話せる内容はないから、やっぱりあの人のことかな~。
「実はね、この前凄くかっこいい人に会ったの。店に花を買いに来たんだけど。ううん、初めてじゃなくて2回目。入院されているお母様のお見舞いなんですって。それがとにかく素敵な人なのよ💗」
美里のうっとりした目を嬉しそうに見ながら、真理はそれを茶化すように言った。
「はいはい、素敵な人だというのは分かりましたよ。ではどういう風に素敵なのか説明して?」
美里はその男、仮にXとしよう、Xがどんなに優しく、どんな顔をしてセクシ—な声で話すか、服装のセンスが良いだの育ちが良いだの、Xの魅力を余すことなく熱く話していた。
じっと耳を傾けていた真理は、美里がXの魅力に一段落した時に、
「美里は運命の人に出会ったのかもしれないわね。」
「えっ、運命の人?」
「そうよ。夢にまで見た憧れの王子様に出会ったということよ。」
「夢にまで見てないわよ。」
「ただの例えよ、それは。」
「王子様かぁ。そうかも知れないわね。」
と言って美里はちょっと真面目な顔になった。
「王子様とお姫様の話は、ハッピ-エンドなの、それとも悲恋?」
「う~ん、私の知ってる限りではハッピ-エンドじゃないの? やはりお伽話だから。」
「そうか、じゃあ次に会う時にはちょっとお洒落な服装にしなきゃなぁ。お姫様らしい服着て、そうそう、美容院にもいったほうがいいかな?」
「待ってよ美里! あなた彼が今度いつ来るか分からないんでしょ? それじゃあ準備のしようがないじゃないの、残念でした、ウフフっ。」
そうだ、と言いながら真理が訊いてくる。
「それはともかく、悠介さんに会ったんでしょ? どうだったの?」
「そうねぇ、別になんか特別面白いことも無かったかな。映画見て食事して、あ、そうそう、食事した帰りに2人の暴漢に襲われたのよ! でもね、私が撃退してやったわ。予想してなかったことが起こったからかしら、そいつらは慌てふためいて逃げて行ったわよ」
「美里の合気道が火を噴いたわけね。それじゃあ暴漢が逃げるのは当然だわ」
「でもねぇ、か弱い乙女に助けられるなんて、悠介さんて頼りないんだから。それに何処をとってもXさんには敵わないしなぁ」
「いくら何でもXさんと比べたら悠介さんが可哀そうよ。学生と社会人とを比べたら、人生経験がまるで違うんだから。でも、その人幾つぐらい?」
「う~ん、アラサ―かしら? 30はいってないと思うけど。」
「そうしたら10歳近く離れているのね、悠介さんやあなたとは。だったら悠介さんに勝ち目はないわね」
「でもさぁ真理。今度会ったらどうしたらいいかしら? すこしセクシ—な格好にしたほうがいいかな? でもそんな服もっていないしなぁ…。もしデートに誘われたらどうしよう💗」
「ところで、その人の名前は聞いたの?」
「まだよ。お客さんとして2回会っただけなのよ。名前を聞けるほど親しいわけじゃないし。ただ、きっとカッコいい名前だと思うわ」
「そう、じゃあ今度会った時に訊いてみたら? フルネームじゃなくてもいいのよ、上でも下でもいいから…」
「そうよね。名前が分からなければ、どう呼んでいいか分からないもんね」」
先ほどまでは恋する美里を優しく見守っていた真理であったが、今真理の顔はすこし心配そうな顔に変わっているみたいだ。
-美里はこういう優しくて男らしい人に弱いからなぁ。大丈夫かしら…。
《つづく》
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