恋愛小説 ハッピ-エンドばかりじゃないけれど

大人になったばかりの男女大学生たちの、真剣だけれどドジな行ったり来たりを繰り返す、恋と友情の物語

第5話 これって友情なの?

「ヒヤァ-、お前に告白するような女子がいるとは驚きだな。それも従妹とわな。それで、お前これからどうすんの?」

と言って、悠介を見ながらニヤリと笑った。

「どうするって、どうしようもないだろう? これからは電話で会いたいなんて言えないし…。でも正直に言えば、俺は結構楽観的に考えていたんだよな。彼女はOKと言うんじゃあないかと思っていたから、ショックは大きいよ。」

「様子見るためにメッセ-ジ送るのはどうだ? そのくらいは許してもらえるだろう。」

「いや、彼女のメルアド知らないからダメだ。」 

月曜の午後の陽光を浴びながら、キャンパス内の18階建てのビルといくつかの3階建ての建物に囲まれた小さな広場のベンチに腰掛けて、悠介は滝本に金曜日の一件を話したところだ。

今日は朝から気合が入らずぼんやりしていたらしく、彼に金曜の一件を問い詰められて白状してしまった。まあ隠してもしょうがないし、話せばすっきりするかもしれないと思ったからだが。

 

-親友に好きな女の子のことを話すのは中学3年以来だなぁ。

 

随分昔の、どうでもいいことを思い出して思わず苦笑してしまった。

 

「でもなあ、もっと強気に押しても良かったんじゃないか? もう一押しすれば落せたかもしれないぞ。」

「あのなあ滝本、ナンパじゃないんだ、俺の従妹だぞ。そんなことは出来る訳ないだろう。」

「でも、お前は期限なしの返答を待つわけか? 大変だな。」

笑っている。勝手にしろ。

 

「悠介、彼女は高3だろう? しかも女子高という事は、今は男子生徒と接することが殆どない。つまり外敵の心配が無い温室で育てられているようなもんだ。

しかしだ、大学に行けば自然と男に接する機会が増えるし、ちょっかいを出す奴も出てくるだろう。かわいい女子であれば尚更だ。でもお前はもうそんなことで気を揉む必要が無くなったわけだ。面倒なことが無くなって結構なことじゃあないか。」

「だから何を言いたいんだよ。」

「お前を慰めてやってんだよ。お前も俺もまだ二十歳だから、もっと色んな女の子と付き合いたいって気持ちはあるだろう? 合コンに参加するとか。俺が企画してやろうか?」

 

そして身を乗り出して顔を近づけると、秘密の話をするかのように小声で言った。

「つい最近聞いた話なんだが、実はな、俺の叔父夫婦は従兄妹同士なんだ。叔父が告白したら叔母も同じ気持ちだという事が分かった。

お互いの気持ちが分かってからというもの、話はとんとん拍子で進んで、あっという間に一緒になったそうだ。ある意味、身内同士でお互いの家族のこともよく知っているから、反対する人もいなくて、それなら直ぐに一緒になってしまえ、という事になった。だから結構若い時に結婚したらしい」

 

その話を聞いて、うちにも十分あり得ることだと思わず頷いた。

 

「だからだ、従兄妹婚なんて好き合ってすぐ結婚だろう?つまらないじゃあないか。俺だったら断られてラッキ-って思うね。」

 

彼が心底そう思っているとは思わないが、彼なりに悠介を慰めようとしているんだから、厚意に甘えることにしよう。

 

「ところで、悠介はどういうタイプの女の子が好みなんだ? グラビア美女みたいな豊満な美女か?」

「以前はそんな子が良いと思っていたけど、やっぱりすらっとした可愛い感じがいいなぁ。」

「ふーん、細身の子が好みなんだな。」

そうなんだ。今自分の部屋の壁にドーンと大きく貼ってあるのは、すらっとした女性の横向きのヌード写真だ。小ぶりだけどきれいな形の胸がいい。

母親や2歳上の姉に見られるのはちょっと恥ずかしいが、男だからしょうがないだろう、と開き直っている。

 

「やっぱり男子しかいない高校だったから、とにかく女の子と話がしたいな。グル-プで気楽に話せる仲がいい。彼女とまでいかなくても、ガールフレンドのような感じかな。」

「よし、じゃあ今度合コンをやろうぜ。経済学部の吉福に頼んでみるか。あいつは結構顔が広いし、こういうことは得意かもしれないからな。」

 

高校の同級生だった親友の名前を挙げた。キャンパスが違うので殆ど会う機会が無くなってしまったのは寂しい。

そう言ったと思ったら、滝本は既に次の話題に移っていた。

「そういえば電気工学科の小黒だけどな、あいつ何処かの女子大生と付き合っていたの知っているだろう? 噂ではあいつら別れたらしいぞ。どうも彼女に好きな男ができたのが原因らしい。つまりあいつは振られたってことだな。お前と同じだよ。可哀そうに。」

言葉とは裏腹に、顔がニヤついていやがる。

これではまるで傷に塩を塗ったも同然じゃあないか。前の慰めは一体何だったのかと言いたくなる。どうせ滝本にとっては、友人であろうと芸能人のゴシップと同様に扱われるのだ。

そうだ、忘れていたことがある。滝本の作り話には人が群がるという事を。話したのはやはり不味かったかもしれないなぁ、明日には自分の一件も仲間中に広がっているかもしれない。

 

〈つづく〉

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