恋愛小説 ハッピ-エンドばかりじゃないけれど

大人になったばかりの男女大学生たちの、真剣だけれどドジな行ったり来たりを繰り返す、恋と友情の物語

第27話 彼女は魔女?

【お知らせ】

このブログの小説は、これまでほぼ毎日1話ずつ投稿してきましたが、内容をより充実して継続していけるように、次回投稿を4日か5日後に、その後は投稿間隔を当初考えていた2,3日に1回程度とさせていただきたく考えています。(場合によっては短くなるかもしれませんが。)

このところ、スト-リ-に迷いが出てきて、中々話が進んでくれないことがままあるからです。もう少し先を見据えながら、目の前の1話1話を丁寧に紡いでいきたいと思います。

私自身としては、とにかく面白いものを書いていくことを第一に考えていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

第27話 彼女は魔女?

 

悠介は自分が何を言われたのか、よく理解できていなかった。

好きよ、と言われたみたいだが、どのように好きという事なのか分からなかったのだ。

「あのさぁ、それって僕のことを美波が好きだってことで、いいんだよね?」

「そうよ。2回も同じこと言ったのだから、そうに決まっているでしょ。それとも他に別な意味があるのかしら?」

「それは、僕と付き合ってもいいってこと?」

「それが悠介くんの希望だったんでしょ? 違うの?」

「そうなんだけど…。」

「なによ、何か不満なんですか?」

そう言って彼女は両手を組んで頬をふくらませる素振りを見せた。

 

「いやあ、そうじゃないんだけど、余りにも急なことなんで、ちょっと…。」

 

実際、悠介は余りの急展開にびっくり仰天していたのだ。勿論それは見事なまでに顔の表情に表れていたようだ。

正直、悠介は何と言葉を返していいのか分からなくなっていたのだ。

 

何と言う事なのだろうか。

-美波のことを好きだと告白したのは、この僕なのに…。

なのにどうしたらいいか分からなくなったなんて、いったいどういう事だよ!

悠介は美波の目を見た。キラキラ輝いている。なんて綺麗な目をしてるんだろう。

 

-彼女は本気だな。

 

そう思った瞬間、悠介の唇は何か柔らかいもので塞がれてしまった。シュマロのようなもの、そう、熱く火照った美波の唇だと気づくのに、ほんの少し時間がかかったようだ。ぼんやり考え事をしていたのか、彼女の顔が間近に迫っていたのにも気づかなかったみたいだ。

     

 

彼女の両手は悠介の両頬を挟むように、軽く添えられていた。

 

-柔らかい、なんて柔らかい唇なんだ…。

 

思わず両手を彼女の頭を押さえるように抱きしめた。

そのまま歓喜の渦の中でうっとりしていた悠介であったが、その甘美な時はあっという間に過ぎ去ってしまった。目を開けると、彼女の唇が遠ざかっていくのが見える。

どうやら魔法の魔力が解けてしまったようだ。

彼女の頭を抱いていた両手を、未練がましくそのまま宙ぶらりんにさせていると、

「今日はここまでよ。ママが入ってきたら大変だから。」

と悪戯っぽく肩をすくめて微笑んでいる。

 

-可愛い、本当に可愛いなぁ…。

 

出来るものならこの場で、強く強く抱きしめたい衝動に駆られた。実際にそうしなかったのは、当然ながらここは美波の家だし、母親も近くに居るのでそんな事出来る訳が無かった。

しかし、この子はいつからこんなに愛らしくなったのだろう? 

いつからこんなに綺麗になったのか? 

いつからこんなに男を魅了する様になったのだろうか?

それに、いつからこんなに積極的になったんだろう? 

まるで自分がこの子に翻弄され弄ばれているように、悠介には感じられた。

彼女の服を押し上げている胸の盛り上がりは、悠介が告白したあの日と殆ど変わっていないのに、彼にはそう思えたのだが、何が彼女をこんなに変えてしまったんだろう?

 

-怖いな、女の子は。なんか追い越されちゃったみたいだな。

 

そして彼女の先程の言葉を思い出していた。

 

-きょうはここまで、か。

 

悠介は自分が、女王様に忠誠を誓わされ、神秘的で甘美なご褒美をお預けされた哀れな王子様のように思えて、こみ上げる笑いを抑えることが出来ずにいた。

目の前には笑っている悠介を、首を傾げながら見ている美波の顔があった。

 

《つづく》

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