恋愛小説 ハッピ-エンドばかりじゃないけれど

大人になったばかりの男女大学生たちの、真剣だけれどドジな行ったり来たりを繰り返す、恋と友情の物語

第21話 初デ-ト(1)

第21話を始める前に、「主な登場人物」と「あらすじ」からどうぞ。

書いている私自身でも、時々名前を間違えそうになるので…。

 

主な登場人物 

城ケ崎悠介 私立W大学理工学部2年生

一見優男で優柔不断なところもあるが、反面いったん決めたらとことんやる一途な一面もある。曲がったことが嫌いで、家族(特に女性陣)から不器用な性格と言われる。小さい頃から失恋ばかりで、恋愛に関しては成功体験ゼロ。2歳上の姉と両親との4人家族。この物語の主人公。

松崎美波  悠介の従妹 K大女子高3年生

悠介が小さい頃から密かに思いを寄せている、スレンダ—で可憐な女子。性格は大人しい。過去のある事から、悠介とは必要以上に意識し合うようになった。

吉岡美里 F女学院大学1年生 フラワ-ショップの娘

悠介との衝撃的な出会いもあり、お互いに反発しながらも魅かれていく。母親譲りの気の強い性格の半面、優しい男らしい男性との出会いを夢見る女子でもある

滝本純一 私立W大学理工学部2年生

悠介の付属高校以来の親友のひとり。とにかく人を引き込む話術は一品でやんちゃな性格な一方で、高校では空手部の主将を務めた硬派でもある。とにかく要領のいい、悠介とはある意味真逆の性格。

吉福正樹  同経済学部2年生

悠介の付属高校以来の親友のひとり。185センチの長身だが、腰は軽く素早い身のこなしで交際範囲が広く、いろいろなところにコネを持つ役に立つ男。

黒川尚大  同商学部2年生

悠介の付属高校以来の仲間のひとり。実家が裕福で仲間内では、庭に『金のなる木』があると噂される気前のいい男。

佐々木里穂 同教育学部2年生 悠介の中学時代の片思いの人

芦田祐子  K大女子高3年生 美波の同級生で親友

小柄のぽっちゃり系で、美波とは対照的に活発でしっかり者の女子。美波の良き相談相手でもある。

石川真理 F女学院大学1年生で美波の親友

如何にも良家のお嬢さまという容姿に、おっとりと大人びた口調の長い黒髪をした女子。率直で飾らない性格を美里が気に入っており、大の親友。

 

第1話から20話までのあらすじ

悠介は子供の頃から思いを寄せていた従妹の美波に告白するが、ハッキリとした返事をもらえない。そんな状況である日、美里と衝撃的な出会いをする。その出会い故にお互いに反発していたが、合コンで再会したことから打ち解け始める。一方、従妹の美波は、大学の上級生向井から一方的な交際を迫られたことから、悠介に相談して恋人役になってもらい向井に断りの返事を送った。そのことから、悠介は美波を送った帰りに車で襲われることになった。美波と美里は、悠介とどう「付き合って」いくべきか苦悩する。特に美里は、自分たちを見捨てた父親への憎悪から、悠介が「どちら側の男」なのか判断に苦しんでいる。

 

第21話 初デ-ト(1)

 

美里と悠介の記念すべき初デ-トは、ゴ-ルデンウィークのど真ん中の昼前に、恵比寿駅前で落ち合う事になった。

相談した結果、あまりお金のかからないカフェで、2人の大好きなスイ-ツを食べながら過ごすことになったのだ。行く店は美里が決めた。その界隈では名の知れたパンケ―キが名物のカフェなのだ。

駅前から徒歩4,5分のその店は、女性に人気のあるお店なので前々から入ってみたいと思っていたが、高校生同士では何となく入りづらかったのだ。

-悠介さんとなら堂々と入れるかも。

 

そんなことを考えていたら、無性に会うのが楽しみになってきた。人気の店だから、入るまでに結構待つことになるかもしれないが、待つのも楽しみではあるかもしれない。

合コンの時に聞いた話では、男の人なのに甘いものが好きなんですって。そういう人もいるんだって、正直驚いてしまった美里だった。

 

駅前についた時は、約束の時間の10分前だった。遅れるのは嫌だったので予定通りといっていい。悠介はまだ来てないだろうと思って周りを見渡そうとしたとき、不意に美里さん、と声を掛けられた。驚いて振り向くとそこに悠介が立っていた。

 

-私の方が早く来たと思っていたのに…。

 

悠介の顔は、何とも複雑な顔をしている!

緊張しているのだろうか、笑おうとしているのに顔の筋肉は強張っている、なんかアンバランスな顔を見ていたら、何故か笑いが込み上げてくるのはどうしてだろう?

自分を見て美里が笑っているのを、悠介は不思議そうに見ていたが何も言ってこなかった。事態が良く呑み込めない状況にどう対処していいか分からないからだろうか。

-それは当然のことなのよ。だって私にもよく分からないことだから。

「ごめんなさい。お待たせしちゃったかしら?」

「いいや全然。僕も今来たばかりだから。それに待ち合わせの時間前だからね。」

突然、悪戯心が湧いてきた。

「一つ訊いてもいいかしら?」

「もちろん。」

「もしも私が遅れてきたら悠介さんはどう思う?」

ちょっと訊いてみたいこと、そして聴いてみたい返事だった。だらしない女と思うだろうか?

《僕は時間に遅れる人は嫌いなんだよ。だから君が遅れなくて本当によかったよ。》

という男の人は結構いると、雑誌なんかにデートの際の注意事項として必ず書いてあることだ。もちろん遅れる方が悪いのだが、美里が知りたいのはその理由であり言い方だった。

 

「君が遅れてきたら、か。待つのは辛いかもね。」

やはりそうか。やっぱりイライラするのは当たり前よね。そうだろう、と思っていたら

「いやあ、もしかしたら約束の時間を間違えたかもしれないとか、約束をすっぽかされたかもしれないなんて考えたら、どうしていいか分からないだろう?このまま待つべきか、それともすべてを諦めてとぼとぼ帰るか、そんなこと考えたら辛くてたまらないよ。」

そうか、美里の目の前にいる人はそう考えるのか。

彼の言ったことは、美里が予想していたこととは正反対の返答だった。

この人はそう言う人なのだ、と美里は思った。その途端に嬉しくて涙がでそうになるのを必死で堪えた。でも、あっと思った時には不覚にも涙が一滴頬を伝ってしまった。

 

美里のその顔が彼を驚かせて不安にもさせたのだろうか。

「え-と、何か変なこと言ったかな。そーか、君が約束をスッポカスなんて言ったからだよね。勿論そんなことは絶対に無いんだけど、ただ待たされる側としてはそう思ってしまうもんなのかな。いや、一人で待っていると何故か不安になるんだ。振られちゃったなんて最悪のことも考えちゃうし…。」

その時の私は、もう完全にコントロ-ル不能の状態だった。涙が止めどもなく流れて唇がワナワナ震えてしまっている…。声を出さなかったのはせめてもの幸いだったと言える。

こんな些細なことで人は泣いたり感激したりするもんだ、というのを美里は初めて実感した。こういう事で涙するのは大歓迎かもしれないが。

でも、今はもうだめ、やめて欲しい…。お願い…。

 

男の人が女の涙に弱い、という話は親友の真理から聞いてはいたが、その時の悠介は正にその姿だった。

 

《つづく》

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